投稿

12月, 2025の投稿を表示しています

樋口一葉作品現代訳、目次

イメージ
樋口一葉作品、現代訳 目次 ページリンク有り 作品は発表順に並んでいます 闇桜 1892 (明治25) 年3月発表 デビュー作 大つごもり 1894 (明治27) 年12月発表 ブラックな職場でヒロインはけなげにがんばる (大つごもり=大みそか) ゆく雲 1895 (明治28) 年5月発表 想いを寄せた女性は木石の人であった にごりえ 1895 (明治28) 年9月発表 ナンバーワン嬢の愛と野望 十三夜 1895 (明治28) 年12月10日発表 若妻の葛藤とその愛 たけくらべ 1896 (明治29) 年1月完結 代表作 一番長い作品です 1/5 (一〜三)遊郭の町、真如と美登里 2/5 (四〜六)祭りの日 3/5 (七〜九)真如と美登里、過去と未来 4/5 (十〜十三)雨 5/5 (十四〜十六)旅立ち わかれ道 1896 (明治29) 年1月発表 みんなみんなどこかへ行ってしまう われから 1896(明治29)年5月発表 わたしから始めたことで、殻は割れた ブログトップへ

われから、目次

イメージ
われから 樋口一葉 初出:1896(明治29)年5月10日『文藝倶樂部』「第二卷第六編」博文館 全13話 約36,000字 ※サブタイトルは筆者によるものです (一)若妻、夫にモヤモヤする (二)わたしから (三)しかしこれは実は、DNAレベルでのことなのであった (四)母に何が起こったか (五)そうなりましたか (六)サイコパス登場、母の母がヤバすぎた (七)恐れていた事が (八)そして町子 (九)その孤独 (十)学生千葉に何があったか (十一)聞いてしまった (十二)ついにきた (十三)割れた殻 ( 樋口一葉作品現代訳、目次 )

われから(1/13)若妻、夫にモヤモヤする

イメージ
(一)  霜の降る夜が更けてゆく。吹く、というほどでもない風が、横の開き戸の隙間から入って枕元に届く。障子がかさこそと紙の音を立ててものがなしく、寂莫としている。旦那様は留守だ。  寝室の時計が十二の音を打つまで、妻はどうしても眠ることができず、寝返りを繰り返すうちに少しイライラしてくる。  どうでもいい現実の諸事情から、旦那様が去年の今頃には「コウヨウカン」に通い詰め入り浸るようになり、ご自身は隠しなさったけれども、外出着のお袂から縫い取り縁のハンカチを発見した時の憎さ。  ガチガチに詰めて詰めて、詰め抜いてもう今後は絶対に行きません、同室のサワキの発言のイとエを取り違えることはあってもこの約束は絶対に守ります、かんべんしてくださいと謝罪しなさっていた時の気分の爽快さ。ここ数か月のイガイガが落ちて、胸のすくほど嬉しく思いましたのに、またかよ最近折々のお泊りである。水曜会とかいうのの方々や、なんとかクラブのお仲間にやんちゃなお方が多いからそこに引っ張られて自然に身持ちが悪くおなりになった「朱に交われば」ということをお花の師匠様が口癖にしておられたけれど本当にあれは嘘ではないことだ、昔はあんなふうな口先の人ではなく、今日はどこそこで芸者を呼んで、こういう不思議な踊りを見てきたとか、おなかが痛くなるような面白いことをもう真面目な顔でおっしゃったものだけれど、今日この頃の性格のたちの悪さはなんだ。憎たらしいくらいにお利口さんなことばかりお言いあそばして、わたしのような世間知らずを手の平の上で丸め込んで、全くもってつかまえようのないお方だ、ああ今晩はどこにご宿泊で、明日はどういう嘘を言ってお帰りになるのか。夕方にクラブに電話をかけたら三時頃にお帰りとのこと、また吉原の式部嬢のところじゃないか、あれだって縁切りとかおっしゃってからはや五年、旦那様だけが悪いのではなくて、季節のお届け物など、ニクイ配慮を見せるからお気持ちがつい浮かれておのずから足も向こうというものだ、全くビジネス嬢とはムカつくものだとだんだんと考えごとが増えてくるといよいよ寝られんで、妻は後ろ前に掛けていたちりめん生地のカイマキをはねのけて、山梨産郡内織の布団の上に起き上がった。  八畳の座敷に、屏風が六枚立っている。枕の先には桐製胴の火鉢と煎茶の道具がある。煙草盆はローズウッドで、キセルは接続部のラオ管が朱色...