わかれ道、目次その他 リンクを取得 Facebook × Pinterest メール 他のアプリ 木曜日, 8月 21, 2025 わかれ道樋口一葉初出:1896(明治29)年1月『國民之友』上中下、全三章約八千字主な登場人物※年齢、名前等、多少変更しました吉三(吉):傘屋で働く二十前の若者(原文では十六才)京子(お京):二十代後半の女性職人(原文では「お京」「二十才余り」)目次※各ページにリンクしています。サブタイトルは筆者によるものです上《お京と吉》中《吉三》下《わかれみち》(樋口一葉作品現代訳、目次) リンクを取得 Facebook × Pinterest メール 他のアプリ コメント
ゆく雲(全編) 日曜日, 1月 22, 2023 ゆく雲 樋口一葉 上 酒折の宮、山梨の岡、塩山、裂石、幸手の名前も都会人の耳には聞き慣れないが、小仏笹子の難所を越えて猿橋の流れに眩めき、鶴瀬、駒飼など見るほどの里もなく、勝沼の町といっても東京での場末であろう。甲府はさすがに大家高楼で、躑躅ヶ崎の城跡など見るところがあるとはいっても、汽車の便が良い頃ならまだしも、わざわざ馬車や人力車に一昼夜を揺られて、では信玄公恵林寺の桜を観ようという人はいないだろう。故郷であればこそ年年の夏休みにも、人が箱根伊香保と催し立てる中を、自分だけはひとり足曳の山の甲斐に峰の白雲あとを消すことそれは仕方もないけれど、この年この度にみやこを離れて八王子に足を向けるのはこれまでに覚えのない辛さだ。 養父の清左衛門が、去年からどこそこ身体に症状があって寝たり起きたりとの話は聞いていたが、つね日頃は健康な人だからたいしたことはないだろうと医者の指示などを申し送り、自分は雲井の鳥の羽交い自由な書生の境遇にいましばらくは遊んでいる気持ちだったところ、先日の故郷からの便りに言うには。 大旦那様のその後の容体にさほどのことはないのですが、次第に短気がまさってわがままが強く、これは一つには年のせいでしょうが、かなりまわりの者にはご機嫌が取りにくく、大いに心配をしております由。私など古狸の身であればとにかくつくろって一日二日と過ごしてはおりますが、筋の通らないわからずやを言いだされ、足もとから鳥が立つようにお急き立てになるのには大いに閉口です。 こんな中からしきりとあなた様をお手元にお呼び寄せなさりたく、一日も早く家督を相続あそばさせ、楽隠居をなされたくお望みの由、これはもっともだとご親類一同のご決議で、私は最初からあなた様を東京へお出しするのは気に食わないくらいだったから、申しては失礼だが多少の学問などどうでも良いことです。赤尾の彦の息子のように気違いになって帰ってきたのも見ているわけなので、もともと利発なあなた様にその心配はないはずだが、遊び人にでもおなりになっては取り返しがつきませんから今のうちにお嬢様とご祝言で、ご家督の引き継ぎにもはや早いお年ではないはずだと大賛成です。 さだめしさだめしその地にはあそばしかけのご用事もありましょう、それなどをしかるべくお取りまとめて、飛ぶ鳥もあとを濁すなですから、大藤の大尽の息子と聞いたが野澤の桂次は了... 続きを読む
闇桜(全編) 水曜日, 2月 15, 2023 闇桜 樋口一葉 上 隔ては中垣となる建仁寺にまかせて、汲み交わす庭の井戸の水の交わりは底が清く深く、軒端に咲く梅の木一本に両家の春を見せて香りも分かち合う、中村園田という家がある。 園田の主人は一昨年亡くなって相続は良之助という二十二の若者で、何々という学校の学生だという。 中村の方には娘がただ一人。男の子もいたが早世したので一粒者ということで、寵愛はいとど手のうちの玉かざしの花に吹かぬ風まず厭いて、願うのはあし田鶴のいのち長かれということなのか、千代と名付けた親心にこそ見えようというものだ。 栴檀の二葉三つ四つからゆくゆくはさぞ、と世間の人が褒めものにした姿の花は、雨誘う弥生の山がほころび初めたつぼみに眺めそわりて、盛りはいつだと松の葉ごしの月がいざようと言うも可愛らしい十六才の高島田に隠れる優しい瞳を絞り、紅は植庭に植えてもかくれなきものだ。中村のお嬢さんとあらぬ人にまで噂される。美人もうるさいものなのだ。 さて習慣とはおかしなもので、北風が空にいかのぼりをうならせて電信の柱が邪魔くさかった昔は自分も昔と思うが、良之助がお千代に向かうときはかつての雛遊びの心があらたまらず、あらたまった姿かたちを気に止めようとすれば止まりもせずに良さん千いちゃんと他愛もない談笑で、しまいには引き出す喧嘩の糸口だ。もう来なさるな何しに来るかお前さまこそという言いじらけに見合わさなかった顔もわずか二日目で昨日は私が悪かった、今後はあんな我がままは言いませんからお許しあそばしてよとあどけなくも詫びられるとさすがにおかしくて、溶けずにはいられない春の氷。いや僕こそが結局だ。妹というもののことは分からないが、いればこうまで愛らしいものか。 笑顔ゆたかに袖をひかえて良さん夕べはうれしい夢をみた、お前さまが学校を卒業なされて何というお役か知らないが高帽子を立派にして黒塗りの馬車に乗って西洋館に入っていらっしゃるところを、と言う。夢は逆夢だ、馬車にでもひかれはしないかと大笑いをすると、美しい眉をひそめて気になることをおっしゃるよ、今日の日曜はもうどこにもおいであそばすなと、今の世の教育を受けた身に似合わないような言葉も、真実大事に思うからだ。 こちらに隔てがなければあちらに遠慮もなく、呉竹の世の憂きということなど二人の中では葉末に置く露ほどにも知られず、笑って暮らす春の日もまだ風寒... 続きを読む
十三夜、目次その他 火曜日, 9月 16, 2025 十三夜 樋口一葉 目次 (訳文にリンクしています。サブタイトルは筆者によるものです) その一「ほとほと嫌になりました」 上流家庭に嫁いだ関子はある夜、実家を訪ねた。しかし様子がおかしい(本文「上」前半) その二「調子に乗りやがって」 夫のひどさを訴える娘の話に、母は激怒する。しかし父が口を開くのだった(本文「上」後半) その三「なんでいまさら」 帰りの人力車。ドライバーは、忘れられないあの人であった(本文「下」全文) 登場人物 関子:主人公。原文では「お関」「関」 関子の父親:斎藤主計(サイトウカズエ) 関子の母親:斎藤主計夫人 原田勇:関子の夫(登場しない) 原田太郎:関子の息子(登場しない) 高坂録之助:好きだった男 構成 上下全二章 約13,000文字 初出 1895(明治28)年12月10日『文藝倶樂部』臨時増刊「閨秀小説」博文館 ※閨秀=優秀な女性 ( 樋口一葉作品現代訳、目次 ) 続きを読む
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